深・熊野  トポロジカル・ラビリンス

展示写真はこの三年半余り日帰りの週末ドライブで熊野の各地を訪ねた折々に、気に懸ったもの・ことにカメラを向けた作品です。

ポケットに入れたコンパクトデジタルカメラで撮影しています。

熊野は遠く広く、入り組み、往還にも現地でも時間がかかります。毎回、自営業を営む日常の中で心の中に徐々に焦点を結んだ地点を目指しましたが、むしろ熊野自体が私を折々の目的地に誘ってくれたように思います。ラビリンス(迷宮)へ踏み込み、元気になって帰路に就くというのが、疲れているはずの私の毎回の実感でした。

熊野の空気というか光が青いことに気が付いたのは、三年前の夏、妙法山を下山して、阿弥陀寺の境内を振り返ったときでした。透明な空気が、どこか青く、むしろ濁っているようにさえ思えたのです。   この青い光はどこから来るのか、海・山・空の青さから来るのか、その青さを生み出す「もの」と「いのち」の循環の密度と速度に、熊野固有の事物の直接性があるのではないかと思い当たりました。

私は写真を撮るために熊野行を繰り返しているのではありません。自然循環との繋がりを模索する感性に、野生と文明の透明な絆を、これらの写真から感じていただければ幸いです。(辻井 隆昭)